The Young Maverick グレン・グールド メジャー・デビュー前後のカナダ国営放送局録音集に見るその多様性
グレン・グールドおすすめCD 若き日のCBC録音集:The Young Maverick(6枚組)
これは1955年のコロンビアからのメジャー・デビュー第一弾《ゴルトベルク変奏曲》の前後―主にはその1、2年前―のカナダ国営放送局(Canadian Broadcasting Corporation)放送音源を集めたもの。バッハ2枚、ベートーヴェン3枚、新ウィーン楽派1枚の6枚組の構成で、独奏曲、室内楽、協奏曲と様々。以前、単売品のCDで出ていたときは、音が曇った感じがありましたが、今回随分すっきりし、この当時の録音としては問題ないレベル。
若き日のといっても、50年代半ばですから、最初期の正規録音と変わらず、腕の冴えは見事。グールドのものなら何でも聞いてみたい!という方にも、気軽に聞けて十二分に楽しめる内容です。
もう少し、細かくかつ端的に長所を書いてみますと・・・
正規盤では出ていないグールドの録音!。
特にベートーヴェン。グールド自身「秋のソナタ」という雰囲気が大変好きな曲と言っていたピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101。いまの季節にもぴったりの名曲で、切ない第一楽章など見事。名チェリストのザラ・ネルソヴァ、ブダペスト弦楽四重奏団の第二ヴァイオリンのアレクサンダー・シュナイダーと組んだ、ピアノ・トリオも三者息がぴったりで、室内楽らしい、すばらしい演奏!グールドのピアノは伝統的で、細かい味付けなどほんとにうまい。ニ長調 Op.70-1《幽霊》など、この6枚組録音集でも大好きなものの一つで、「これだけでも聴いてください!」と思ってしまいます。正規盤とはまた違ったアイディアが楽しめます!バッハ:ゴルトベルク変奏曲
簡単な例で示すと、全曲収録された《ゴルトベルク変奏曲》。1954年のモノラル録音です。正規盤の二枚 1955年モノラル録音(この録音の輸入盤)の38分、1981年デジタル録音(この録音の輸入盤)の51分の中間で42分。勿論、こういった全体の時間はかなり大まかな指摘にすぎず、変奏ごとの時間だけ見ても、繰り返しの有無等々で簡単な話ではないのは、ご注意を。
いずれにせよ、この1954年のゆったりしたアリアの出だしを聴くと、「初期は早く、晩年はcomfortに遅く」というグールド自身も規定した大きな図式も、あまり単純にそのままに受け取ると、目を曇らせるかな・・・と思わせます。
勿論、いままで出ていた録音でも、ロシアへのコンサート・ツアーのライブ音源などで、こういったグールドの多様性は示されていますが、本日ご紹介している若きグールドの録音集:the young maverick/le jeune original(6枚組)は入手しやすさ、安価な価格から言って、おすすめしやすいものでしょう。
曲目詳細 グレン・グールド CBC録音集:The Young Maverick(6枚組)
では、録音内容の詳細を以下に。若きグールドの録音集:the young maverick/le jeune original(6枚組)の収録曲詳細。バッハの録音: Disk1, Disk2 / ベートーヴェンの録音 Disk3, Disk4, Disk5 / 新ウィーン楽派の録音Disk6
Disk 1 (先頭に戻る)
- J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲全曲 BWV988 (録音:1954年6月21日)
- J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第二集から抜粋 前奏曲とフーガ No.14 BWV883, No.7 876 & No.22 891 (録音:1954年2月28日)
- J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第二集から抜粋 前奏曲とフーガ No.9 BWV878 (録音:1952年10月21日)
- J.S.バッハ:パルティータ第5番 ト長調 BWV829 (録音:1954年10月4日)
- J.S.バッハ:《インヴェンションとシンフォニア》の《シンフォニア》のみ全曲 BWV787-801(録音:1955年3月15日)
- J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971 (録音:1952年10月21日)
- J.S.バッハ:協奏曲第1番 二短調 BWV1052 (E.マクミラン指揮/トロント交響楽団 録音:1952年10月21日)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15 (E.マクミラン指揮/トロント交響楽団 録音時期不明)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.19 (E.マクミラン指揮/トロント交響楽団 録音時期不明)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.19の第三楽章のみ (E.シャーマン指揮/Startime Orchestra 録音時期不明)
- ベートーヴェン:バガテル Op.126 (放送:1952年9月28日)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101 (放送:1952年10月12日)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4番 嬰ホ長調 Op.7の第二楽章のみ (放送:1952年10月12日)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第19番 ト短調 Op.49-1 (放送:1952年10月12日)
- ベートーヴェン:アレグレット 変ロ長調 WoO39 (ザラ・ネルソヴァ Vc,アレクサンダー・シュナイダー Vn 放送:1954年7月18日)
- ベートーヴェン:ピアノ・トリオ ニ長調 Op.70-1《幽霊》(ザラ・ネルソヴァ Vc,アレクサンダー・シュナイダー Vn 放送:1954年7月18日)
- ベートーヴェン:創作主題による6つの変奏曲 Op.34 (録音:1952年9月28日)
- ベートーヴェン:エロイカの主題による15の変奏曲とフーガ Op.35 (録音:1952年10月5日)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 Op.37 (H.アンガー指揮/CBC交響楽団 録音:1955年2月21日)
- シェーンベルク:ピアノ協奏曲 Op.42 (J-M.ボデ指揮/CBC放送交響楽団 録音時期不明)
- シェーンベルク:三つのピアノ小品 Op.11 (録音時期不明)
- シェーンベルク:ピアノのための組曲 Op.25 (録音時期不明)
- アルバン・ベルク:ピアノ・ソナタ Op.1 (録音時期不明)
- ウェーベルン:ピアノのための変奏曲 Op.27 (録音時期不明)