2011-03-09

Glenn Gould


グレン・グールドは語る (ちくま学芸文庫) [文庫]

グレン・グールド (著), ジョナサン・コット (翻訳), 宮澤 淳一 (翻訳) 

出版社: 筑摩書房 (2010/10/8)
  • ISBN-10: 4480093133
  • ISBN-13: 978-4480093134
  • 発売日: 2010/10/8
  • 商品の寸法: 15.2 x 11 x 0.8 cm
  • 文庫: 225ページ
  • ¥1,155
  • レビュー対象商品: グレン・グールドは語る (ちくま学芸文庫) (文庫)
    グールドにローリング・ストーンの記者が電話インタビューした内容に、演奏中に椅子の高さを調整するという奇妙な行為がセンセーショナルに報じられたことについての本人の発言を加え、発表されたレコード、映像等の詳細な情報をまとめた本である。グールドのファンなら必読、そうでなくとも、この本を読む事は他には換え難い経験と楽しみをもたらしてくれる。
    ローリング・ストーンという雑誌はロックやポップ音楽のみならず当時の政治や若者文化全体を論じていた雑誌だったようで、このインタビューも音楽理論の話からビートルズに関する論考、4チャンネルオーディオ(今で言うところのサラウンド環境)への挑戦等、非常に幅広い題材を扱っている。それらがインタビュアーの的確な誘導を伴い広く深く展開されていく様は滅多に見ないほど面白い。
    文書の内容のみならずその時代の写真を随時載せてあり、視覚的にも楽しませてくれるような配慮がなされている。映像分野にも明るかったグールドの本としてふさわしい配慮だと思う。その最高の例が、赤が嫌いなグールドが赤いセーターをまとっている表紙の写真である事等も訳者が丁寧に解説している。思うに、この本が面白いのは原著の内容もさることながら、訳者が随所に入れている解説や脚注、そして写真等に負うところも多いのではなかろうか。会話の随所には、その会話が指している音楽が何年発表のどのレコードなのかも書いてあり、その気になればちゃんと音楽を聴きながら読めるようになっている。訳者がこのような大変細かな気配りを大量に入れているおかげで、この本はグールドを知る為の最高の材料の一つになり得たのだろうと感じた。