ロラン・バルト
ロラン・バルト(Roland Barthes, 1915年11月12日 - 1980年3月26日)はフランスの批評家。高等研究実習院(École pratique des hautes études)教授、コレージュ・ド・フランス教授。
思想・作風 [編集]
シェルブールに生まれ、バイヨンヌに育つ。ソシュール、サルトルの影響を受け、エクリチュールについて独自の思想的立場を築いた。 歴史家にとどまらないミシュレの活動に着目した『ミシュレ』、「作者の死」の一編を収めた『物語の構造分析』、フランスのさまざまな文化・慣習を分析した『神話作用』、衣服などの流行を論じた『モードの体系』、バルザックの中編を過剰に詳細に分析した『S/Z』、自伝の形をとりながら自伝ではない『彼自身によるロラン・バルト』、写真を「プンクトゥム」という概念などで論じた遺作『明るい部屋』など、その活動は幅広い。
生涯 [編集]
幼くして父を亡くし、女手一つで育てられたバルトは非常に母親思いであったという。 パリ大学で古典ギリシア文学を学んだあと、結核のために長期間に渡り療養所で暮す。 療養期間を終えたあとは各地でフランス語講師として働きながら思索をめぐらす。 1953年に『Le Degré zéro de l'écriture』を発表、文学と社会の関係を鋭く分析したこの作品で一躍時代の寵児になる。 1962年から高等研究実習院指導教授。1977年にコレージュ・ド・フランス教授に就任した。 1980年2月25日に交通事故にあい、一ヶ月後の3月26日に亡くなった。 バルトは構造主義者だと見なされる向きを嫌い、常に変容していった思想家だった。 1970年には日本について独自の分析をした『表徴の帝国』(『記号の国』)も発表している。
主要著作 [編集]
- Le Degré zéro de l'écriture (1953年)
- 零度の文学 森本和夫訳、現代思潮社、1965
- 『零度のエクリチュール』渡辺淳・沢村昂一訳 みすず書房(1971年 ISBN 4622004658)
- 『エクリチュールの零度』森本和夫・林好雄訳註 ちくま学芸文庫(1999年 ISBN 4480085238)
- 零度のエクリチュール 石川美子訳 みすず書房 2008
- Michelet par lui-même (1954年)
- 『ミシュレ』藤本治訳 みすず書房(1974年 ISBN 4622051303)
- Mythologies (1954年)
- 『神話作用』篠沢秀夫訳、現代思潮社(1967年 ISBN 4329000598)
- Essais Critiques (1964年)
- 『エッセ・クリティック』篠田浩一郎・高坂和彦・渡瀬嘉朗訳 晶文社(1972年 ISBN 4794923287)
- La Tour Eiffel (1964年)
- Critique et vérité (1966年)
- 『批評と真実』保苅瑞穂訳 みすず書房 2006
- Système de la mode (1967年)
- 『モードの体系─その言語表現による記号学的分析』佐藤信夫 (言語哲学者)訳、みすず書房(1972年 ISBN 4622019639)
- S/Z (1970年)
- 『S/Z─バルザック「サラジーヌ」の構造分析』沢崎浩平訳 みすず書房(1973年 ISBN 4622019663)
- L'Empire des signes (1970年)
- 『表徴の帝国』宗左近訳、新潮社(1974年 /ちくま学芸文庫 1996
- サド、フーリエ、ロヨラ 篠田浩一郎訳 みすず書房 1975
- Nouveaux Essais critiques (1972年)
- 『新=批評的エッセー─構造からテクストへ』花輪光訳 みすず書房(1977年 ISBN 4622004704)
- Le Plaisir du texte (1973年)
- 『テクストの快楽』沢崎浩平訳 みすず書房(1977年 ISBN 4622004712)
- Roland Barthes par Roland Barthes (1975年)
- 『彼自身によるロラン・バルト』佐藤信夫訳 みすず書房(1979年 ISBN 4622004798)
- 旧修辞学 便覧 沢崎浩平訳 みすず書房 1979
- 物語の構造分析 花輪光訳 みすず書房 1979
- 映像の修辞学 蓮實重彦・杉本紀子訳 朝日出版社 1980 /ちくま学芸文庫 2005
- Fragments d"un discours amoureux (1977年)
- 『恋愛のディスクール・断章』三好郁朗訳 みすず書房(1980年 ISBN 4622004828)
- Leçon (1978年)
- 『文学の記号学─コレ-ジュ・ド・フランス開講講義』花輪光訳 みすず書房(1981年 ISBN 4622049554)
- バルト、<味覚の生理学>を読む ブリヤ=サヴァラン 松島征訳 みすず書房 1985
- La Chambre claire (1980年)
- 『明るい部屋─写真についての覚書』花輪光訳 みすず書房(1985年 ISBN 4622004895)
- 作家ソレルス 岩崎力・二宮正之訳 みすず書房 1986
- L"Obvie et l"obtus (1982年)
- 『第三の意味─映像と演劇と音楽と』沢崎浩平訳 みすず書房(1984年 ISBN 4622004844)
- 『美術論集─アルチンボルドからポップ・アートまで』沢崎浩平訳 みすず書房(1986年 ISBN 4622004917)
- Le Bruissement de la langue (1984年)
- 『言語のざわめき』花輪光訳 みすず書房(1987年 ISBN 4622004542)
- 『テクストの出口』沢崎浩平訳 みすず書房(1987年 ISBN 4622008718)
- 記号学の冒険 花輪光訳 みすず書房 1988
- Incidents (1987年)
- 『偶景』沢崎浩平・萩原芳子共訳 みすず書房(1989年 ISBN 4622045311)
- 小さな神話 下沢和義訳 青土社 1996
- 小さな歴史 下沢和義訳 青土社 1996
- ロラン・バルト映画論集 諸田和治編訳 ちくま学芸文庫 1998
- ラシーヌ論 渡辺守章訳 みすず書房 2006
- 喪の日記 石川美子訳 みすず書房 2010
ロラン・バルト著作集(みすず書房) [編集]
- Oeuvres complètes de Roland Barthes 2002年
ロラン・バルト講義集成(筑摩書房) [編集]
- いかにしてともに生きるか コレージュ・ド・フランス講義1976-1977年度 野崎歓訳 2006
- 〈中性〉について コレージュ・ド・フランス講義1977-1978年度 塚本昌則訳 2006
- 小説の準備 コレージュ・ド・フランス講義1978-1979年度と1979-1980年度 石井洋二郎訳 2006
ロラン・バルトの日本語研究 [編集]
- 渡辺諒『バルト-距離への情熱』(白水社、2007年)
- 原宏之『<新生>の風景』(冬弓舎、2002年)
- グレアム・アレン『ロラン・バルト』(青土社、2006年)
- 鈴村和成 『バルト テクストの快楽』 (講談社<現代思想の冒険者たち>、1996年)
- ジャン=ピエール・リシャール 『ロラン・バルト 最後の風景』(芳川泰久、堀千晶訳、水声社、2009年)
関連項目 [編集]
- 中村江里子 - 元フジテレビ・アナウンサー。ロラン・バルトの縁戚と結婚