2012-03-31

『北山の峠』 金久昌業著


この本は北山を歩く人にとってはバイブル的な存在であり、インターネット上や様々な山行記録に登場してくる.京都から若狭への街道に横たわる峠について、単なる参考記録でなく、それぞれの峠にまつわる歴史や文化、生活、などにも触れられていて読み物として素晴らしい著作である.この本については触れられているので今更ここで紹介する必要もあるまい.
初版第1刷で、上巻は昭和53年11月5日の出版、中巻が昭和54年11月15日、下巻は昭和55年11月30日である.従って既に約30年が経過しているが、ここに描かれた約100の峠は今どうなっているのであろうか?


・・・私には自然の中に生き続けてきた彼等(木地師)が一種の自由人だと思われる。人を犯さず人に訴えず、ただ内面の戒律によって自己を規制して自然に生きてきた人々である。胸のすくような毅然とした生きざまではないか。欲望渦巻く修羅の巷に生きねば人間が出来上らないということはない。ドロドロとした人間模様の中に流されるのもまたよいが、往々にして愚劣の繰り返しや徒労の場合が多い。権威を否定して生きてきた私には彼等が近く感じられる。  
-『北山の峠』(下) 野田畑峠ー