2011-02-06

ウミショウブ



ウミショウブ

ウミショウブEnhalus acoroides)は、トチカガミ科ウミショウブ属に分類される海草(≠海藻)の一種。インド洋〜西太平洋の熱帯から亜熱帯域に分布する。日本では沖縄県沿岸に分布する。本種のみでウミショウブ属を構成する(1属1種)。

名前の由来 [編集]

海中で生える姿がショウブを思わせることから名がある。種小名 acoroides はショウブ属の学名 Acorus に因んでいる。年に一度しか受粉できないことを喩え、悲恋花などとも呼ばれる[要出典]

特徴・生態 [編集]

熱帯・亜熱帯のインド洋から太平洋西部にかけて分布する。日本では沖縄県の西表島および石垣島とその周囲の海域で見られ、本種の分布の北限を成している。 浅い海に生息する。

受粉システム [編集]

ウミショウブの雌花は葉と同様の浮力をもっているが、その柄を含めた背丈は通常水深よりも短く、花(のつぼみ)は水面より下にある。 ところが干満の差が最も激しくなる大潮の日の干潮時には、花がちょうど水面に届く程度の水深になる。 雌花はちょうどこの数時間にあわせて開花し、水面に貼りつくようにして花びら(正確には巨大化して三叉状になった柱頭)を広げる[1]
いっぽう雄花は雌花よりずっと小さく、また長い柄もなくて、海底近くで多数の白い花をつけるが、成熟すると本体から切り離され、水面へと浮かび出る。 と同時に花弁が反り返るように開き、高さ3mm程度の雪だるまのような、あるいははじけたポップコーンのような形になって、水面の上に立ち上がる[1]。 群生地ではそれぞれの株からおびただしい数の雄花がいっせいに水面へと浮かび出て、ときに海面を真っ白に覆いつくす。
風や波の力によって、雄花は水面を走るようにして容易に流されてゆく。 ほとんどの雄花はどこへともなく流されて終わるが、ごく一部の雄花はたまたま、水面上に開いている雌花にひっかかり、その内部へとはまり込む。 潮が満ちてくると雌花は雄花を閉じ込みながら沈んでゆき、受粉を完了する。
雄花、雌花ともに一日花で、こうした受粉イベントが初夏から秋にかけての大潮の日に繰り返される[2]。 受粉後のの中には10個前後のが入っていて、熟してはじけると、種が散らばり、根づく。
このような方法で受粉する植物はウミショウブのみであるとされる。 大潮の干潮時にぴったり同期した受粉イベントがどのように実現されているのか、定説はないが、ウミショウブは体内時計を持っているとする説が有力である[要出典]。 これと似たようなものに、満月の日におけるサンゴの産卵がある。

外部リンク [編集]

脚注 [編集]

  1. a b 雌花・雄花ともに、花びらの外側は親水性、内側は疎水性(撥水性)をもち、これによって水面上で適正な姿勢を保つことができる。また、受粉のために重要な器官は濡れないようになっている。
  2. ^ 西表島では5月から9月にかけて開花が見られるという (横地洋之, 1985. 海に咲く花 – 西表島のウミショウブについて – 海中公園情報 64: 7-9.)